元 外資系広告代理店 営業マンのつぶやき

ちょっと早めの定年退職。さてとこれから何をやろうかな。

Vol. 5 - 健康のことではなく、病気のこと

今回は健康のことを書こうかと思ったけれど、とある病気のことについて書くことにしました。ちょっと重い内容ですが最後までご一読いただければと存じます。

 

突然ですが、ある日を境に少しずつ自分体が動かなくなってゆくとしたらみなさんはどうしますか。不安に駆られますよね。たとえば右手に力が入らないとか、腕を一定の高さまで上げると途端に力が抜けてストン!と腕が下に落ちてしまったり。はじめは多忙すぎたからかな?疲れがたまっているからなぁ最近は、と思いがち。

 

でも1~2ヶ月経っても症状は改善されず、それどころか以前より症状が進んでいるみたいだなぁと自分でも感じる。さすがにおかしいと思い病院に行く。病院でも原因不明あるいは他の病院を紹介される。最終的に行きついた病院で検査入院を強いられ多数の検査を実施。入院後2週間程度経ったころ、医師より病名が告げられる。あなたは「筋萎縮性側索硬化症」であることが限りなく疑われますと。10万人にひとりの難病で、英語名ALS(エー・エル・エス)と呼ばれ、米国で国民的人気があったメジャーリーグ選手のルー・ゲーリックがこの病気で亡くなったことから、米国ではALSのことを「ルー・ゲーリック病」と呼ばれることもあります。原因不明で現在の医学では根治ができず不治の病のひとつです。

 

医師は説明を続けます。体の運動ニューロン(運動神経)だけがなんらかの異常(原因不明)により侵されてゆく病気です。他の感覚(嗅覚・味覚・熱い・冷たい・かゆい・脳機能などは正常のまま)機能し続けます。最初は手足の不自由から始まりその後、シャツのボタンも留めたり服を着ることもできなくなったり、噛む力もなくなるので食事もできなくなり、さらに症状は足にも広がるため歩くこともできなくなります。

 

当然車椅子となり、病状が進行すると呼吸をつかさどる筋肉も侵され呼吸もままならなくなるので酸素マスクを装着せざるを得なくなります。そしてそのころにはベッドに寝たきりとなり、もちろん自分では寝返りもできずほぼ24時間完全介護となります。いずれは酸素マスクでは自発呼吸のサポートができず呼吸器の筋肉も機能しなくなり呼吸困難というか呼吸ができなくなり死に至ります。

 

その後も医師は淡々と病気の説明を行います。呼吸器不全で死に至ることを防ぐためには器官切開し、人工呼吸器を装着し「胃ろう」により栄養を補給することになります。気管切開後は自身の声を発することはできなくなるので目だけのコミュニケーションとなります。先に述べましたように、現代医学では不治の病で発病からなにもしないと平均5年程度で亡くなられるというデータもあります。また日本の法律では人工呼吸器を装着したら外すことは許されず、ずっと24時間看護で生き続けなければなりません。

 

ここまですべてを医師が一気に説明するとは思えませんが、いずれ本人はこのことを自覚し、受け入れざるを得ないのです。これは生きながら死人宣告を受けるのと同じことで、あるいは死より厳しい選択を強いられるといっても過言ではないかと思います。世界で一番残酷な病気と言われているALS(筋萎縮症側索硬化症)の病状進行と生きるための選択肢までの話とさせてもらいました。

 

そしてALSは手足や呼吸器など、体を動かすあるいは生活するための筋力をすべて奪い去ってゆきます。すべての筋力を奪っても最後に残るのが目と瞼(まぶた)の筋力です。したがいALS患者さんは最後の手段として「目の力」を使ってPC入力や文字盤による意思の伝達をしてゆくという状態まで追い込まれます。

 

この病気の残酷だと言われる由縁は前述の通り、運動ニューロンだけが侵されてゆく病気でその他の感覚はすべて生きているのです。したがい、仮に蚊が皮膚を刺してかゆくてもかくこともできず、顔にハエがとまっても払うこともできないのです。そういった神経は健全に作動しているのですから。そして最も残酷と言われている最後の症状が瞼(まぶた)を開くことができず、完全に暗黒の世界に閉じ込められてしまうという状態(TLS=完全な閉塞あるいは完全な閉じ込め状態とも言います)が必ず来ることです。自身の意思で瞼を開けることもできず閉じることもできなくなってしまいます。いままで目の力によるPC入力や文字盤使用による意思伝達はできなくなり、自身の意思はすべて伝えられなくなるという悲惨な状況が必ず来るのです。

 

なんでこんな話をするのか?実はこの話は以前、私が勤めていた会社の同僚がこの病気に侵され、発病から約10年。気管切開をして現在はTLS(完全なる閉塞状態)の一歩手前という状況にきているのです。それでも同僚は発病とほぼ同時に一般社団法人を立ち上げALSの認知と根絶を願って今でも活動しています。本人は以前「動かない体、意思を伝えられなくなってゆく体、これでも私は人と言えるのだろうか」と申されていました。その現状を知ってもらうために” I’M STILL ”というイベントを開催し、身動きできない体をモデルとして絵画を趣味としている人達に自身を描いてもらい、ALSの啓蒙活動を行ったこともあります。本人曰く「俺はさらし者になる」と言ってそれこそ体を張ったイベントでした。この文章を読んでくださった方々に対して私はALSという病気を知ってもらい一日のうち、いや一週間のうちほんの数秒でも構わないのでALS患者さんのことを思いALSが根絶してくれればと願ってもらえればという思いから書いております。

 

世の中にこんな病気があるのか!?とお思いでしょうが2014年にアイス・バケツ・チャレンジというSNSを中心としたキャンペーンが一世を風靡したことがあります。頭のてっぺんから氷水をかぶり、他の人へその行為をつなぎALSという病気を知ってもらおう!という世界的なキャンペーンでした。読者の方々の中には体験された人もいらっしゃるのではないでしょうか。あれから約7年、徐々にではあるますがALSの根本的な原因や発病のメカニズムも解明され始めたとも聞きます。

 

またALSを題材にした映画「10万分の一(劇場公開2020年11月27日)」が封切られ、白濱亜嵐さんと平祐奈さんのダブル主演でALSの残酷さを伝えています。さらに2020年にはこの病気で苦しんでいる患者さんがSNSで知り合った医師に自らを殺害してもらう依頼をしたという事件も起き、それを特集したNHK番組「患者が ”命を終えたい” と言ったとき」が2020年12月26日に放送されました。少しずつですが難病ALSを知ってもらおうとメディアや映画業界でも動き始めたということを伝えさせていただきました。

 

最後になりますが、ALSを広く知ってもらうために毎年夏至の日を「世界ALSデー」とし、様々なイベントが世界中で行われます。近年、世界中で行われているのが「GORON(ゴロン)」です。ALSで動かなくなった体を自身が体験する行為で「ゴロンと地べたに寝っ転がり」そのまま5分間、なにがあっても動かないということを行います。手軽と言っては語弊がありますが、どこでも一人でも、いつでもできるGORONをみなさまも体験してみてはいかがでしょうか。

 

一秒でも早くこの世界一残酷と言われる病気=ALSから患者さんたちが解き放たれる日を願ってやみません。本当はもっと多くのことを書きたいのですが本日はこのあたりで終わりとし、続きはまたの機会とさせていただきます。最後までご一読いただきありがとうございました。

 

自分も含めみなさんにもう一度、お聞きします。ある日突然、自分の体が動かなくなりはじめたらどうしますか、そしてどう思いますか。。。★最後までご一読ありがとうございました。

 

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2014年に行われたアイス・バケツ・チャレンジでのひとコマ。